この記事では、日本の出版業界が直面している課題を変革のチャンスに転じる新たな視点を提供しています。業界特有の流通事情や業績不振といった問題を抱える出版業界において、D2C(Direct to...
【限定記事】ビジネスモデルキャンバスの概要
2023年9月15日に開催したセミナーでは、DX(Digital Transformation)の企画を立てる上では、事業のビジネスモデルを可視化することが重要であるというお話をしていました。今回はその補足記事となります。
セミナーでは、DX企画を立案するにあたっては、自社だけでコントロール可能な業務プロセス再設計や業務処理の効率化・省力化などの所謂「守りのDX」だけではなく、ビジネスモデルそのものや顧客接点の抜本的な改革、既存の商品やサービスの提供価値の向上のような「攻めのDX」を目指すべきだという主旨のお話をしました。
この「攻めのDX」を進めるためには、自社のビジネスモデルを分析した上で、これをリデザインするスキルが必要となります。
そのためのツールの一つがビジネスモデルキャンバスです。
ビジネスモデルキャンバスとは何か?
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを設計・評価・理解するための視覚的なツールであり、スイスの経営コンサルタントであったアレクサンダー・オスタワルダーが発案し、ローザンヌ大学のイヴ・ぴにゅーる教授によって監修されました。
9つのビルディングブロックによって、ビジネスの構成要素を視覚的に配置することで、ビジネスモデルの理解を助けます。
似たモデルツールの中には、リーンキャンバス(Lean Canvas)がありますが、このリーンキャンバスが新規事業の開発にフォーカスしている一方で、ビジネスモデルキャンバスは既存のビジネスモデルの評価・改善にも用いることができます。
※リーンキャンバスは「顧客の課題」が何か?という点により焦点を当てたモデルになっています。
9つのブロックの解説
それでは、9つのブロックの役割を説明していきます。ビジネスモデルキャンバスを描く際には、可能な限りに以下の順で要素を洗い出すことをお勧めします。
- 顧客セグメント
・誰のために価値を創造するのか?
・もっとも重要な顧客は誰か? - 価値提案
・どのような価値を提供するのか?
・どのような問題を解決するのか?
・どのようなニーズを充たすのか? - チャネル
・どのように顧客にリーチするのか?
・どのようにサービスの認知度を上げるのか?
・どのように顧客に価値を届けるのか? - 顧客との関係
・どのような関係を構築・維持するのか?
・どのように顧客満足度を高めるのか? - 収益の流れ
・どのように収益を得るか?
・顧客は何に対してお金を払うのか? - 主要なリソース
・価値提供に必要なリソースは何か?
・チャネルや顧客との関係に必要な資源は何か? - 主要な活動
・価値提供に必要な活動は何か?
・チャネルや顧客との関係に必要な活動は何か? - パートナー
・主要なパートナー、サプライヤーは誰か?
・どのリソースをパートナーから得ているか?
・どの活動をパートナーが担っているか? - コスト構造
・このビジネス特有で重要なコストは何か?
・どのリソースが最も高価か?
・どの活動に最も費用が掛かるか?
DXと9つのブロックの関係
業務プロセス再設計や業務処理の省力化・効率化といった「守りのDX」が担うのは、上記の9つのブロックのうち、左側に配置されている⑥~⑧のブロックです。「守りのDX」においては、顧客セグメントや顧客への提供価値を変更するのではなく、あくまで、そのために必要なリソースや活動を最適化し、コスト削減を目指す発想となります。パートナーやサプライヤーの見直しが行われることもあります。
一方で、ビジネスモデルを変革するような「攻めのDX」が焦点を当てるのは、右側に配置されている①~④のブロックです。自社のビジネスモデルを根本から見直し、顧客セグメントや顧客への提供価値に手を入れる。そこまで行かなくとも、顧客との関係性を見直し、新しいチャネルを築くということが行われます。
日本企業のIT部門は、どうやらコスト削減や業務効率化に目を向けがちな傾向があるようです。よって、DX企画を立ち上げる際には「守りのDX」に向かう傾向があります。
ビジネスモデルキャンバスはこれを是正するための有効なツールです。自社のビジネスモデルをキャンバスに描くことで、自ずと右側のブロックにも目が向くようになり、「攻めのDX」を意識できるようになるでしょう。
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